金型の弾性変形を活用した精密鍛造歯車の成形技術
EDF(Elastic Deformation for Forging)法
諸言
近年、精密冷間鍛造品のニーズが高まる中、歯車の冷間鍛造に20年ぐらい前から関心を持って、 1988年に金型の弾性変形を活用して歯車の冷間鍛造によるサイジング成形を成り立たせ、この手法を延長して1998年に「クラウニング付ヘリカルギアの冷間鍛造」を完成しました。 この間の経緯について解説する。
1.)一般的歯形成形
歯車ダイの摩擦によりA部に欠肉を生じる。この際の圧力分布は、上方が高く、下方が低くなっている。

図1
2.)一般的粗歯成形後のサイジング
1.)の歯形成形時の欠肉を埋め埋めようとしたサイジングである。この際の圧力分布も1.)と同じように上方が高く、下方が低くなってしまう。

図2
3.)捨てボスを利用した歯形成形
捨てボスを出して成形内圧を低くして歯形張出しを容易にする。ダイ側の押出し率を低くして歯部下方の欠肉が起こりにくいようにする。しかし、圧力差を補正する事が難しい。

図3
4.) 1)〜3)を考えると縦方向にある摩擦に対処した方法を考え出す事が必要になる。
これが、金型の弾性変形を活用した歯車成形法(EDF法)である。本法は、1988年に開発したもので、基本的には、粗歯成形後のサイジング手法である。パンチAによって歯形ダイBをアウターダイCの内径テ−パに沿って押込む事で歯形部へ半径方向外方からひずみを与える事が出来、摩擦による上下方向の圧力差を生じないようにする。

図4
(特許No 1685554)
(特許No 1955582)
この際上下方向から各々パンチ@ダイDによってひずみを与え製品内部の圧力を塑性変形可能応力B以上に高める必要がある。B以上に高めた状態において、ひずみCを与えてから除荷すれば、塑性ひずみDを残す事になる。

図5
(特許出願中 2000-323028)
5.) 2.)3.)の欠点を簡易的に直そうとしてもやはりEDF法。 図6に圧力差分を歯形ダイの形状をX部の如く対応する事で加圧時の歯形寸法は良好となるはずであるが、図7に示すように製品排出時に歯形ダイのスプリングバックによって製品形状がテ−パ状になってしまう。 EDF法では、製品排出時には、歯形ダイが半径方向外方へスプリングバックする為に、製品形状に影響を与えない。

図6

図7
6.)歯面テ−パーギアの成形にも効果ある。
歯面がテ−パ状になった歯車を成形後に排出する際、テ−パ歯が先に金型から離れてしまい、外径は相変わらず金型と接触している。外径から押された肉がテ―パ歯面へ凸形状を作り出し、精度を狂わしてしまう。この際にもEDF法は、効果がある。

図8
7.)クラウニング付ヘリカルギアの冷間鍛造。
@)粗歯成形
従来からの技術を独自のノウハウを込めて、当社の開発したEDF法に合うようにした。

写真1
A)仕上成形
クラウニング付ヘリカルギアの冷間鍛造を成り立たせているのは、この仕上成形(サイジング)にある。

写真2
B)歯形ダイを回転させる意義
歯車歯筋方向に山なりとなっているクラウニング形状を完全に写しとる為に歯形ダイ13を相対運動側へ回転させ歯形ダイ13の歯面に発生する摩擦力でもって欠肉部へ肉を運び込む様な動作が必要であった。

写真3
C)歯車精度の調整
現実は理想的なものではない。製品内部の圧力をより一定にしようとする本技術は、製品内部の圧力を塑性変形可能応力B以上に上げる為にパンチ25とノックアウト21によってはさみ込むように圧縮している事から圧力差が生まれている。これに対処するには、アウターダイ12の内径テ−パー形状を製品形状へ対抗する方向で、設定する事で、可能となり精度の良い製品を得る事が出来る。
・製品径寸法及び歯厚調整
・製品歯形圧力角調整
・製品ねじれ角の左右バランス調整
・製品クラウニング量調整
以上が出来るようになった。また、製品の焼入れひずみに対しても同様対処できるようになった。
D)歯形ダイ13を冷間鍛造で製造
開発当時、放電加工では、製造出来なかった為に、冷間鍛造成形に使う金型も冷間鍛造で作った。当然、冷間鍛造するには、焼鈍材である。したがって冷間鍛造後に焼入れ、焼戻しがある。焼入れひずみを伴う事になる。この対処もC)と同様製品を冷間鍛造する際に相殺されるようになる。
8.)クラウニング付ヘリカルギアの冷間鍛造品が与える効果
@)歯車を切削加工するのではなく、冷間鍛造成形する事により、切粉を出さない為に、再溶解量が減少し、CO2削減に役立つ
A)冷間鍛造成形された歯車は、鋼材ファイバーフローが切断されていない為に、耐久性が向上するものと思われる。これにより軽量化への道ができる。
B)冷間鍛造成形では、放射状のひずみによって成形されている為に、焼入れひずみにおいて、左右歯のアンバランス量が少ない。
C)歯車は長年、ギア音に苦しめられているが、その分野にも役立つものと思われる。
結言
@)今回開発した技術は、歯車のサイジング技術であり、前工程が冷間鍛造成形されたものでなくても可能である。
・歯切加工されたもの
・転造成形されたもの
A)歯車以外にも、特殊形状のサイジングには、役立つものと思われる。
